東京都Ⅰ類Bの論文試験|過去11年12問を分析した傾向と対策
東京都Ⅰ類B(一般方式)の論文では、複数の資料から課題を読み取り、東京都が進めるべき取組を90分でまとめます。この記事では、平成28年度から令和8年度までの11年分・全12問をⅠ類Bだけに絞って分類し、優先して準備する分野と資料の読み方を整理します。
この記事の役割
この記事は、東京都Ⅰ類B(一般方式)の出題傾向から、準備する分野の順番を決めるための記事です。段落構成と字数配分を先に知りたい方は、東京都Ⅰ類B 教養論文の書き方をご覧ください。
読み終えたときに、次の3つが分かるようにしています。
- Ⅰ類Bでは、どの分野が繰り返し出ているのか
- 3点前後の資料から、現状をどう書くのか
- 原因と取組を、どの順番で準備すればよいのか
※ 本記事はⅠ類B(一般方式)を対象としています。新方式・新方式第2回は試験構成が異なります。
この記事の内容
東京都Ⅰ類B(一般方式)の論文試験の形式
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題数 | 1題必答 |
| 解答時間 | 1時間30分(90分) |
| 字数 | 1,000字以上1,500字程度 |
| 設問(1) | 資料から重要な課題を選び、200字程度で説明 |
| 設問(2) | 課題に対して東京都が進めるべき取組を論述 |
| 資料 | 3点のことが多い |
本番で初めて行うのは、資料から分野を判断し、現状を文章にする作業です。弊害、原因、取組は、分野ごとに事前準備できます。90分を資料の読み取りに使えるよう、原因と取組を先に持っておくことが対策の中心です。
※ 令和8年度の論文が90分・課題式1題必答であることは、東京都職員採用のⅠ類B(一般方式)公式案内で確認しています。字数・設問文は受験年度の公表問題も確認してください。
出題分野の頻度|Ⅰ類Bの12問を数えた結果
| 順位 | 分野 | 件数 | 構成比 |
|---|---|---|---|
| 1 | 産業・雇用 | 3 | 25.0% |
| 2 | 高齢・福祉 | 2 | 16.7% |
| 2 | 多様性・共生 | 2 | 16.7% |
| 4 | 観光・文化 | 1 | 8.3% |
| 4 | 防災 | 1 | 8.3% |
| 4 | 環境 | 1 | 8.3% |
| 4 | 都市基盤・交通 | 1 | 8.3% |
| 4 | 行政運営・広報 | 1 | 8.3% |
産業・雇用が3問で最多です。高齢・福祉と多様性・共生が各2問で続き、上位3分野だけで全体の58.3%を占めます。
産業・雇用は、中小企業、働き続けられる環境、スタートアップと形を変えて出題されています。個別の制度名を覚えるより、企業の人手・資金・ノウハウ、働く人の時間・スキル・生活、行政の支援基盤という原因の分け方を準備すると応用できます。
準備する順番は、上位3分野から
12問の集計から、最初に準備したいのは次の3分野です。
- 産業・雇用:中小企業、起業、働き方、人材確保
- 高齢・福祉:社会参加、地域生活、支援の担い手
- 多様性・共生:女性活躍、ボランティア、参加機会
この3分野で、現状・弊害・原因・取組3つを書ける状態をつくり、その後に観光、防災、環境、都市交通、行政広報を追加します。
分野名を知っているだけでは答案になりません。各分野で「原因と取組の組」を3つ持っているかが準備の基準です。
資料は「増減・ギャップ・格差」で読む
Ⅰ類Bの資料では、数値の暗記より、資料が何を対比させているかを判断します。
| 型 | 現状の書き方 | 原因の方向 |
|---|---|---|
| 増減型 | Aが増えている/減っている | 社会環境や行動の変化 |
| ギャップ型 | 希望する人は多いが、実現できていない | 職場・担い手・制度の障壁 |
| 格差型 | 属性や企業規模によって差がある | 支援へのアクセスと資源の差 |
令和8年度は、男性が希望する育休日数と実際の取得日数の差が資料で示されました。本人の意識だけを原因にせず、職場の人員体制、管理職の理解、代替要員、制度利用の仕組みまで考えるための資料です。
設問(1)は「現状+原因または弊害」でまとめる
200字程度で複数の課題を列挙すると、設問(2)の取組が散らばります。重要な課題を1つ選び、資料から分かる現状と、その原因または放置した場合の弊害を書きます。
原因を3方向へ分ける
- 意識:当事者に情報、知識、時間、余裕がない
- 担い手:企業や地域団体に人手、資金、ノウハウがない
- 仕組み:制度、データ、連携、基盤が足りない
原因を分けてから取組を書くと、周知・啓発だけが3つ並ぶ答案を防げます。
過去問分野と東京都の計画を対応させる
Ⅰ類BはⅠ類Aのように現行施策への言及を明示されない年度でも、東京都の権限と実情に合う取組を書く必要があります。「2050東京戦略」を入口に、過去問分野ごとの専門計画から原因・対象・手段を準備します。
| 過去問の分野 | 確認する東京都の公式計画・方針 | 答案へ抜き出す論点 |
|---|---|---|
| 多様性・女性活躍 | 東京都男女平等参画推進総合計画 | 男性の育業、仕事と育児・介護の両立、企業支援、意思決定への参画、固定的役割分担の解消 |
| 観光 | PRIME観光都市・東京 東京都観光産業振興実行プラン | 地域資源、リピーター、受入環境、観光人材、持続可能性、データを用いた情報発信 |
| スタートアップ | Global Innovation Strategy 2.0 | 創出からスケールアップまでの支援、実証フィールド、海外展開、資金・人材、官民協働 |
| 広報・広聴 | 東京都の戦略的な広報・広聴 | 対象別の媒体設計、情報の到達確認、アクセシビリティ、都民の声、効果測定と改善 |
| 高齢・福祉 | 東京都高齢者保健福祉計画 | 介護予防・フレイル予防、社会参加、地域生活、住まい、介護人材、区市町村支援 |
| 防災 | TOKYO強靭化プロジェクト | 耐震化・不燃化、在宅避難、地域防災力、電力・通信、ハードとソフトの組合せ |
| 中小企業・働き方 | 東京都中小企業振興ビジョン | 生産性、販路、資金、事業承継、人材確保・育成、多様な働き方、地域産業 |
| 環境 | ゼロエミッション東京戦略 Beyond カーボンハーフ | 省エネ・再エネ、建築物、移動、資源循環、区市町村・企業・都民との協働 |
| 都市基盤・交通 | 2050東京戦略 戦略18 インフラ・交通 | 公共交通ネットワーク、地域交通、道路環境、次世代モビリティ、物流、維持管理 |
高齢・福祉|「地域生活」は生活の場面まで分解する
東京都高齢者保健福祉計画は、地域生活を、社会参加だけでなく、生活支援、住まい、在宅療養まで含む連続した支援として整理しています。抽象語のまま使わず、次のように「何をするか」へ変換します。
| 場面 | 公式計画の方向 | 答案に書ける取組 |
|---|---|---|
| 元気な段階 | 居場所と出番をつくり、関心や健康状態に応じて、通いの場、就労、学習、趣味、地域活動へ参加できるようにする。 | 活動情報の一元化、相談・マッチング、移動支援、多様な通いの場の整備を行い、参加継続率や外出頻度を確認する。 |
| 生活上の困りごと | 介護保険、区市町村事業、民間サービス、住民の支え合いを組み合わせる。元気な高齢者も見守り等の担い手として活躍できる環境を整える。 | 生活支援コーディネーターが買物、移動、家事、見守りの不足を把握し、住民団体、NPO、事業者を地域包括支援センターと結ぶ。 |
| 住まい | 身体状態や所得に応じた住まいを確保し、住宅施策と福祉施策をつなぐ。 | 居住支援法人、不動産事業者、福祉部門が、入居相談、家主支援、安否確認・生活支援を一体で提供する。 |
| 医療・介護が必要な段階 | 病院と地域の医療・介護関係者が入院時から連携し、退院後も在宅医療と介護を切れ目なく提供する。 | 多職種の情報共有、訪問看護人材の確保、急変時の連絡体制、家族介護者の相談・休息支援を組み合わせる。 |
根拠にした公式資料:東京都高齢者保健福祉計画の介護予防・フレイル予防と社会参加、地域生活を支える取組、在宅療養の推進。
「地域生活」を問われた場合の一本線
孤立や生活上の困りごとを早期に把握する → 本人の希望に合う活動・サービスへつなぐ → 住民・NPO・事業者の担い手を増やす → 医療・介護が必要になっても住まいを変えず支えられる体制をつくる、という流れで答案を組み立てます。
主要分野の計画を具体策へ変換する
| 分野 | 東京都が示す進め方 | 答案での具体化 |
|---|---|---|
| 多様性・女性活躍 | 両立制度を使いやすい組織風土、男性の育業、女性の就業・意思決定への参画を一体で進める。 | 管理職研修、業務の見える化、代替要員支援、取得前後の面談を行い、取得率だけでなく日数と復職後定着率を測る。 |
| 観光 | 食・文化・夜間・多摩島しょの体験を磨き、受入環境、データ発信、人材・DX、住民との共生を組み合わせる。 | 対象市場をデータで選び、地域事業者と商品造成し、多言語・バリアフリー情報と予約・決済を整え、再訪率と住民意識で改善する。 |
| スタートアップ | 創出から成長まで、資金、人材、実証場所、販路、海外展開を段階別につなぐ。 | 行政課題と企業をマッチングし、都有施設等で実証し、規制・調達上の課題を検証して、公共調達や民間販路へつなぐ。 |
| 広報・広聴 | 複数媒体で発信し、都民の声や世論調査でニーズを把握して「伝わる広報」へ改善する。 | 対象者ごとに媒体と言葉を変え、アクセシビリティを確保し、閲覧数だけでなく制度認知率・利用率・問い合わせ内容を検証する。 |
| 防災 | 耐震化・不燃化と、マンションの在宅避難、日常備蓄、管理組合支援、地域の共助を組み合わせる。 | マンション防災計画、住民訓練、携帯トイレ等の備蓄、要配慮者支援、町会との連絡体制を整え、参加率・備蓄率を追う。 |
| 中小企業 | DX・販路・価格転嫁・BCP・事業承継・人材を企業の段階に応じて支援する。 | 経営診断、専門家派遣、導入費支援、商談、定着支援を一貫化し、売上、生産性、賃上げ、導入継続率で効果を測る。 |
| 環境 | 省エネ・再エネ、建築物、移動、資源循環を、都の率先行動と企業・区市町村との協働で進める。 | 補助だけでなく、診断、技術・企業間マッチング、公共調達、地域単位の実証を組み合わせ、排出削減量や再生材利用率を測る。 |
計画は「施策名」ではなく、原因と役割分担を取る
例えばスタートアップなら、イベントを増やすだけでは弱い答案になります。資金、人材、実証場所、海外展開という成長段階ごとの障壁を分け、都は支援者のネットワーク化や公共空間・行政課題を使った実証を担い、民間は投資・専門支援を担う、と役割を整理します。
ニュースは、計画で重点分野を絞ってから追います。当サイトで過去問に使われた新聞資料の日付を調べたところ、試験日までの間隔はおおむね3.5か月から9か月でした。前年の夏から当年の初めごろまでの報道発表、統計、事業の進捗を確認します。
計画を答案へ変える3問
- 計画が示す「目指す姿」と現状の差は何か。
- 既存施策は、どの対象・原因へ届いているか。
- 残る課題に対し、都・区市町村・企業・地域の役割をどう分けるか。
過去の出題テーマ一覧|Ⅰ類B
問題文の転載ではなく、各年度の中心テーマを要約しています。令和5年度は同一年度に2問あります。
| 年度 | 分野 | テーマ |
|---|---|---|
| 令和8(2026) | 多様性・共生 | 性別にとらわれず、誰もが活躍できる社会 |
| 令和7(2025) | 観光・文化 | 何度でも訪れたくなる東京 |
| 令和6(2024) | 産業・雇用 | スタートアップの創出・成長 |
| 令和5(2023)第1回 | 行政運営・広報 | 都民に伝わる広報 |
| 令和5(2023)第2回 (技術職対象) | 高齢・福祉 | 高齢者施策 |
| 令和4(2022) | 防災 | 首都直下地震への備え |
| 令和3(2021) | 産業・雇用 | 誰もが働き続けられる東京 |
| 令和2(2020) | 高齢・福祉 | 高齢者が安心して暮らせる社会 |
| 令和元(2019) | 産業・雇用 | 中小企業の活性化 |
| 平成30(2018) | 多様性・共生 | ボランティア文化の定着 |
| 平成29(2017) | 環境 | 環境先進都市の実現 |
| 平成28(2016) | 都市基盤・交通 | 快適な都市交通の実現 |
Ⅰ類Bでよくある失点
1. 資料を順番に要約する
資料1、資料2、資料3を説明するだけでは、重要な課題が伝わりません。資料の共通点を一つの現状としてまとめます。
2. 課題を複数選ぶ
設問(1)は課題を1つに絞ります。設問(2)の取組も、すべてその課題に対応させます。
3. 課題と取組がつながらない
高齢者の社会参加を課題にしたのに、介護人材確保を提案するなどのずれを防ぎます。課題→原因→取組を一本の線でつなげます。
4. 取組が啓発だけに偏る
意識、担い手、仕組みの3方向に原因を分け、異なる手段を配置します。
5. 国の権限を都の取組として書く
法律、全国一律の規制、税制、社会保険制度は基本的に国の手段です。都の支援、連携、実証、基盤整備へ置き換えます。
よくある質問
東京都Ⅰ類Bの論文試験は何分ですか。
一般方式の論文は1時間30分(90分)です。課題式1題必答で、1,000字以上1,500字程度で解答します。
どの分野が多く出ていますか。
12問では産業・雇用が3問で最多です。高齢・福祉と多様性・共生が各2問で続き、この3分野が58.3%を占めます。
まとめ
- Ⅰ類B一般方式は90分・1題必答・資料3点のことが多い
- 過去12問では産業・雇用が3問で最多
- 高齢・福祉と多様性・共生を加えた上位3分野で58.3%
- 資料は増減・ギャップ・格差の型で読む
- 設問(1)の課題を1つに絞り、原因と取組を3方向へ分ける
Ⅰ類Bの論文対策では、当日に考える作業を資料の読み取りへ絞ることが大切です。分野ごとの原因と取組を事前に用意しておけば、初めて見る資料でも答案の骨格を組み立てやすくなります。