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失敗例と改善 ・ 22

公務員試験の論文で評価を落とす答案例|よくある失敗と直し方

公務員試験の論文では、文章が自然でも評価されにくい答案があります。よくある原因は、設問に正面から答えていない、課題が曖昧、原因と取組がつながらない、施策が抽象的といった構造上の問題です。失敗答案と改善答案を比較しながら、具体的な直し方を解説します。

2026年9月21日

この記事の結論

評価を落としやすい答案には、①設問ずれ、②課題が広すぎる、③原因がない、④原因と取組が不一致、⑤施策が抽象的、⑥施策の羅列、⑦効果が曖昧という共通点があります。表現を整える前に、課題・原因・取組が一本につながっているかを直してください。

1. 「評価を落とす答案」とは

試験区分によって評価方法は異なり、詳細な採点基準がすべて公開されているとは限りません。そのため、「この表現を書けば必ず減点される」と単純に判断することはできません。

一方で、設問の要求を満たさない答案、論理関係が読み取れない答案、取組の内容が分からない答案は、受験者の考えや行政理解が採点者へ伝わりにくくなります。この記事では、このような答案を「評価を落としやすい答案」として扱います。

誤字脱字だけの問題ではない

文章表現が多少ぎこちなくても、設問に答え、課題・原因・取組が具体的につながっていれば考えは伝わります。反対に、読みやすい文章でも、設問に答えていなければ十分な答案にはなりません。

2. 想定問題と評価を落としやすい答案例

練習用の想定問題

災害が激甚化・頻発化する中、地域の防災力を高めるうえでの課題を挙げ、行政が取り組むべきことを具体的に論じなさい。

想定字数:1,000字程度

失敗答案の例

近年、日本では地震や台風などの自然災害が増えている。災害はいつ起こるか分からず、多くの被害が発生する可能性がある。そのため、防災対策を進めることは非常に重要である。

現在の課題は、住民の防災意識が低いことである。行政は住民の防災意識を高めなければならない。また、高齢者などの災害弱者を守ることも重要である。地域のつながりが薄くなっていることも課題であり、地域全体で協力する必要がある。

第一に、行政は情報発信を充実させるべきである。ホームページやSNSを活用し、多くの人に情報を伝える。防災マップも配布し、住民に危険な場所を知ってもらうことが大切である。

第二に、防災訓練を充実させるべきである。自治会や学校、企業などが連携し、多くの住民が参加できる訓練を実施する。また、高齢者や障害者への支援も充実させる必要がある。

さらに、備蓄を増やし、避難所の環境を改善することも重要である。行政だけでなく、住民一人ひとりが自助・共助の意識を持つべきである。このような取組を進めることで、災害に強い地域を実現できると考える。

一見すると、防災情報、訓練、要配慮者、備蓄、避難所など、多くの要素が入っています。しかし、何が中心課題で、なぜ起きており、どの取組で解決するのかが見えにくい答案です。

3. 失敗答案の問題点

問題点答案中の状態評価されにくい理由
背景が長い災害の一般論から始まり、課題の提示が遅い限られた字数を使う一方、受験者独自の分析が増えていない
課題が複数ある意識、高齢者、地域のつながりを同列に置く答案全体で何を解決したいのかが定まらない
原因がない「意識が低い」と述べるだけなぜ情報発信や訓練が必要なのかを説明できていない
取組が抽象的充実、活用、連携、支援を繰り返す誰が誰に何をするか、実施の流れが分からない
施策を羅列する情報、訓練、備蓄、避難所を次々に追加する各施策が課題解決へどう貢献するかが薄くなる
効果が曖昧「災害に強い地域」で終わる住民の行動がどう変わるのかが示されていない

この答案を直すとき、文章を言い換えるだけでは不十分です。最初に論点を一つへ絞り、課題・原因・取組を設計し直します。

4. 直す前に答案を設計し直す

失敗答案には多くの論点がありましたが、ここでは「避難情報を受け取っても行動へ移せない住民がいる」という課題へ絞ります。

要素改善後の設計
課題高齢者など、災害情報の取得や単独避難が難しい住民が適切に避難できない
原因1情報伝達がスマートフォン等に偏り、必要な人へ届く手段が不足している
取組1防災行政無線、電話、戸別受信機、訪問などを組み合わせて伝える
原因2支援が必要な人と支援者の役割が平時に共有されていない
取組2本人の同意を得て個別避難計画を作り、地域・福祉専門職と訓練する
効果情報取得から実際の避難までを切れ目なく支援できる

課題を絞ると、二つの原因と二つの取組が対応します。防災に関する知識を多く見せるのではなく、一つの問題を深く解決する答案になります。

5. 同じ問題を改善した答案例

改善答案の例

災害が激甚化・頻発化する中、行政が情報を発信するだけでなく、住民一人ひとりの避難行動へつなげることが重要である。特に、高齢者や障害者など、情報の取得や単独での避難が難しい住民が、適切な時期に安全な場所へ移動できないことが課題である。

第一の原因は、災害情報の伝達手段がスマートフォンやインターネットに偏ると、機器の操作に不慣れな人や通信環境を利用できない人へ届かないことである。そこで行政は、防災アプリやSNSに加え、防災行政無線、電話による一斉連絡、戸別受信機、地域の支援者による訪問を組み合わせるべきである。平時に住民の希望する受信方法を確認し、複数の手段から同じ避難情報を届ける。また、情報には避難先と移動開始の目安を簡潔に示し、受け取った人が次に何をすべきか判断できる内容とする。これにより、情報格差によって避難が遅れることを防げる。

第二の原因は、支援が必要な人、避難を助ける人、福祉・医療機関の役割が平時に共有されていないことである。そこで行政は、本人の同意を得ながら個別避難計画の作成を進める。福祉専門職、自治会、民生委員、地域の事業者などと連携し、避難先、移動方法、連絡する人を具体的に決める。計画は作成して終わりにせず、地域単位の訓練で実際に移動できるかを確認し、家族構成や健康状態の変化に合わせて更新する。地域の担い手へ負担が集中しないよう、複数の支援者を登録し、行政が研修や調整を担うことも必要である。

取組後は、複数の情報手段を登録した住民の割合、個別避難計画に基づく訓練の実施状況、訓練で明らかになった課題の改善状況を確認する。情報を確実に届ける仕組みと、避難を支える体制を一体で整えることで、支援が必要な住民を取り残さず、地域全体の防災力を高められると考える。

改善答案では、新しい施策を大量に追加していません。課題を一つへ絞り、原因1と取組1、原因2と取組2を対応させ、最後に効果の確認方法を示しています。

6. 公務員論文でよくある失敗7つと直し方

6-1. 設問の一部にしか答えていない

「課題と取組」「行政の役割と自分の考え」など、設問に複数の要求がある場合、一部だけでは不十分です。問題文の要求へ線を引き、答案のどの段落で答えるかを構成メモに書きます。

6-2. 課題が広すぎる

直す前直した後
少子高齢化が課題である。移動手段を失った高齢者が、通院や買物を継続できないことが課題である。

大きな社会問題をそのまま課題にせず、誰にどのような不利益が生じているかまで書きます。

6-3. 原因を飛ばして施策を書く

「交流イベントを行う」と書いても、孤立の原因が参加機会の不足なのか、相談先の分断なのかで必要な取組は変わります。施策の直前に「なぜ起きているか」を一段落置きます。

6-4. 原因と取組が対応していない

人材不足を原因に挙げながら、情報発信だけを提案しても解決につながりません。原因ごとに番号を付け、「原因1→取組1」「原因2→取組2」と対応を確認します。

6-5. 「充実・推進・連携」で終わる

直す前直した後
関係機関との連携を強化する。学校が把握した困り事を相談窓口へ引き継ぐ共通様式を整え、月1回のケース会議で支援状況を確認する。

実施主体、対象、方法、連携先、実施後の流れを補うと、施策の具体性が高まります。

6-6. 施策を多く並べすぎる

三つ、四つと施策を並べると、一つあたりの説明が短くなります。字数に応じて二つ程度へ絞り、必要性、実施方法、効果まで書く方が考えは伝わります。

6-7. 根拠を確認していない数字や制度名を書く

数字や制度名は具体性を高めますが、誤っていれば答案の信頼性を損ないます。確認できない数字を無理に入れず、使用する場合は行政機関の一次情報で確かめます。

7. 提出前10分でできる見直し

書き終わったら、表現より先に内容を確認します。

  1. 設問対応:問題文が求める要素すべてに答えているか
  2. 課題:対象者と不利益が具体的か
  3. 原因:課題が起きる理由を説明しているか
  4. 対応関係:各原因に対応する取組があるか
  5. 具体性:誰が・誰に・何を・どう行うかが分かるか
  6. 行政の役割:個人の努力だけで終わっていないか
  7. 効果:取組によって何が変わるかを書いたか
  8. 形式:字数、段落、誤字脱字、主語と述語を確認したか

直す順番

設問対応 → 論理構成 → 施策の具体性 → 文章表現の順に確認します。時間がないときに漢字や言い換えばかり直すと、答案の中心的な問題が残ります。

8. まとめ