【はじめに】東京都Ⅰ類A 論文試験の概要と書き方|90分で資料と現行施策をつなぐ手順
東京都Ⅰ類Aの論文では、別添資料から重要な課題を絞り、その課題に対して東京都が進めるべき取組を、都の現行施策に触れながら論じます。資料の説明だけでも、知っている施策の列挙だけでも答案はまとまりません。「資料が示す問題 → 課題 → 現行施策 → 次の取組」を一本につなぐことが必要です。この記事では、問題を開いてから見直しを終えるまでの基本手順を解説します。
この記事の役割
この記事は「試験概要と書き方の基本」を理解するための記事です。過去11年11問の出題分野や、優先して準備するテーマを知りたい方は、東京都Ⅰ類Aの論文試験|過去11年11問を分析した傾向と対策をご覧ください。
1. 東京都Ⅰ類Aの論文はどういう試験か
令和8年度の東京都職員Ⅰ類A採用試験では、論文は第1次試験で行われる1時間30分の課題式・1題必須解答です。近年の問題では、複数の資料を踏まえて課題を200字程度で述べ、その課題に対する取組を、都の現行施策に言及しながら論じる構成が続いています。
| 項目 | 押さえる内容 |
|---|---|
| 試験時間 | 1時間30分(90分) |
| 出題形式 | 課題式・1題必須解答 |
| 設問(1) | 別添資料から重要な課題を200字程度で簡潔に述べる |
| 設問(2) | 課題への取組を、都の現行施策に言及した上で論じる |
| 答案全体 | 問題文の字数指定を確認し、設問(1)と設問(2)を一体で仕上げる |
※ 試験形式は年度によって変わる可能性があります。受験年度の試験案内と公表問題を必ず確認してください。出典:東京都職員採用 令和8年度 Ⅰ類A採用試験
2. 設問が求める2つの作業を分ける
Ⅰ類Aの論文では、設問(1)と設問(2)で作業が違います。設問(1)は、資料から見える問題を絞り、何を課題とするかを決める部分です。設問(2)は、その課題を解決するために、東京都が何をするかを具体化する部分です。
| 考えること | 答案で示すこと | |
|---|---|---|
| 設問(1) | 資料は何を示し、何が問題なのか | 現状・原因または弊害・重要な課題 |
| 設問(2) | 都は既に何を行い、次に何を進めるべきか | 現行施策・取組3つ・実施方法・効果 |
ここで課題と取組をずらさないことが重要です。設問(1)で「支援を必要とする人に情報が届かないこと」を課題にしたなら、設問(2)では情報の集約、対象別の発信、相談につなぐ仕組みを中心に書きます。設問(1)と無関係な施設整備を長く書いても、問いに答えたことにはなりません。
設問(1)は問題の診断、設問(2)は処方箋です。診断と関係のない処方箋を書かないことが基本です。
3. 答案の設計図を先に作る
資料を読んだ後、すぐ本文を書き始めるのではなく、次の6行をメモします。これが答案の設計図です。
| ブロック | メモする内容 |
|---|---|
| 設問(1) | 現状 → 原因または弊害 → 重要な課題 |
| 序論 | (1)の課題を受け、目指す姿と3つの取組を示すためのつなぎの文章 |
| 取組① | 見出し → 現行施策 → 追加する取組 → 効果 |
| 取組② | 見出し → 現行施策 → 追加する取組 → 効果 |
| 取組③ | 見出し → 現行施策 → 追加する取組 → 効果 |
| 結論 | 都の役割、連携、目指す状態 |
メモは文章にせず、単語で構いません。取組3つが重なっていないか、東京都が実行できる内容か、現行施策とつながっているかを確認してから書き始めます。
4. 設問(1):課題を200字程度でまとめる
200字で資料をすべて説明することはできません。書く内容は、現状、原因あるいは放置した場合の弊害、重要な課題の3点に絞ります。
設問(1)の骨格
資料から、【増えている・減っている・差がある状態】が分かる。一方、【届いていない人・不足している仕組み】が存在し、【原因】によって【弊害】が生じている。したがって、【東京都が解決すべき課題】を進めることが重要である。
資料の数値を4つも5つも並べる必要はありません。課題を導くために必要な数字だけを使います。「高齢者が増えている」という現状だけでは課題にならないため、何が不足し、誰が困り、何を整える必要があるかまで進めます。
また、課題を広げすぎないことも大切です。「少子高齢化を解決する」「災害をなくす」のような大きすぎる課題は、設問(2)の取組と結びつきません。「必要な支援へつなぐ」「避難生活を継続できる体制を整える」など、行政が動ける大きさに絞ります。
5. 設問(2):現行施策から次の取組へつなぐ
「都の現行施策に言及する」とは、事業名を1つ書けば終わりという意味ではありません。現在の取組が何を目指し、どこまで行われているかを押さえた上で、資料が示す課題に対して何を強化・追加するかを述べます。
現行施策に触れる1段落の骨格
東京都は現在、【現行施策の目的・内容】を進めている。一方、資料からは【残る課題】が確認できる。そこで都は、【連携相手】と連携し、【対象者】に対して【具体的な手段】を実施する。これにより、【課題がどう改善するか】を実現する。
施策名を正確に思い出せない場合は、曖昧な固有名詞を書くより、施策の内容を説明します。反対に、計画名だけを書き、その後に一般的な啓発を続けても、現行施策を踏まえた提案にはなりません。現状の取組と、自分が提案する次の一手の境目を明確にしてください。
6. 取組は3つに分けて書く
設問(2)は、取組を3つに分けると構成が安定します。3つとも情報発信、3つとも施設整備ではなく、対象や手段を変えます。
| 方向 | 取組の例 |
|---|---|
| 利用者・都民 | 対象別の情報提供、相談、参加支援、行動を後押しする仕組み |
| 担い手・事業者 | 人材育成、伴走支援、データ連携、事業者間の協力 |
| 都市・制度 | 基盤整備、区市町村との広域調整、ルール、効果検証 |
各段落は、見出しを置き、現状の不足、具体的な実施方法、期待する効果の順で書きます。「連携を強化する」だけでは具体策ではありません。誰と何を共有し、どの場で意思決定し、どの指標で成果を確かめるのかまで考えます。
7. 字数配分を先に決める
字数指定は受験年度の問題文に従います。答案全体を1,000〜1,500字程度で作る場合は、1,300字前後を基準にすると各取組を具体化しやすくなります。
1,300字で書く場合のめやす
設問(1) …………………… 200字
序論 ………………………… 100字
取組①②③ ………………… 各280〜300字
結論 ………………………… 100〜110字
取組①だけを長く書き、取組③を数行で終えると、答案全体の説得力が落ちます。3つの段落はおおむね同じ長さにします。序論は(1)の課題を受けて目指す姿と3つの取組へつなげられれば短くても構いませんが、結論は都の役割と目指す状態まで書いて締めます。
8. 90分の時間配分
おすすめは、資料の読み取りと構成に20分、執筆に60分、見直しに10分です。
| 時間 | 作業 | 終える状態 |
|---|---|---|
| 0〜3分 | 設問を読む | 何を200字で示し、何を施策として書くか確認 |
| 3〜12分 | 資料を読む | 変化・差・届いていない人に印を付ける |
| 12〜20分 | 構成を作る | 課題、現行施策、取組3つを6行でメモ |
| 20〜80分 | 答案を書く | 設問(1)から結論まで書き切る |
| 80〜90分 | 見直す | 誤字、主語、設問との対応、字数を確認 |
資料を読む時間を増やせば必ず良い答案になるわけではありません。設問(1)を支える材料と、取組の方向を決める材料が見つかったら構成へ進みます。残り10分を切ってから結論を書くのではなく、残り10分で答案全体を読めるようにします。
9. 資料は「変化・差・届いていない人」を探す
資料を読むときは、図表の種類ごとに見る場所を決めます。
| 資料の型 | 見る場所 | 課題の方向 |
|---|---|---|
| 推移 | 増加・減少、変化が止まる時点 | 需要の変化に供給や制度が追いついているか |
| 希望と実態 | 希望する割合と実現した割合の差 | 利用・参加を妨げる障壁は何か |
| 属性別比較 | 年齢、性別、地域、事業者規模による差 | 支援へのアクセスや機会の格差は何か |
| 段階別 | 認知から利用までに人数が減る場所 | 情報、手続、受入体制のどこで離脱するか |
資料のタイトルを言い換えるだけではなく、複数の資料をつなぎます。「需要は増えている」「希望者は多い」「実際の利用は少ない」という3点がそろえば、供給不足や利用障壁を課題として導けます。
10. 評価を落としやすい答案と直し方
| よくある状態 | なぜ弱いか | 直し方 |
|---|---|---|
| 資料の数字を並べる | 何を課題と捉えたか分からない | 数字は課題を導くものだけに絞る |
| 課題が大きすぎる | 取組と一対一で対応しない | 行政が動ける大きさまで絞る |
| 施策名だけを書く | 現行施策を理解したか、提案との差が分からない | 目的・内容・残る課題を説明する |
| 啓発を3回繰り返す | 異なる原因に対応できていない | 都民、担い手、制度・基盤に分けるなど複数の角度から提案する |
| 東京都の権限を越える | 実現方法に説得力がない | 都の広域調整、区市町村支援、事業者連携に置き換える |
| 設問(1)と(2)がずれる | 自分で示した課題に答えていない | 各取組の末尾で、課題のどこを解消するか確認する |
11. 本番までに準備すること
準備するのは完成答案の丸暗記ではありません。分野ごとに、現状、原因、都の現行施策、取組3つを1枚にまとめます。問題の表現が変わっても、隣接する分野の材料を組み合わせられる状態を目指します。
- 受験年度の試験案内と公表問題を確認する
- 都の基本戦略と、頻出分野の計画を読む
- 1分野につき「現状・原因・現行施策・取組3つ」を作る
- 90分で1本書き、設問(1)と取組の対応を添削で確認する
- 直した取組を分野ごとの施策ストックに残す
東京都の施策を調べる入口としては、都の長期戦略や各局の計画が使えます。ただし、計画を読んで終わりにせず、資料が示す課題に対して、現在の取組をどう強化するかを自分の言葉で書いてください。