東京都Ⅰ類Aの論文試験|過去11年11問を分析した傾向と対策
東京都Ⅰ類Aの論文は、資料を読んで課題を示すだけでは終わりません。都がすでに行っている施策を押さえた上で、次に何を進めるべきかまで書く試験です。この記事では、平成28年度から令和8年度までの11問をⅠ類Aだけに絞って分類し、準備すべき分野と資料の読み方を整理します。
この記事の役割
この記事は、東京都Ⅰ類Aの出題傾向から、何を優先して準備するかを決めるための記事です。Ⅰ類B(一般方式)とは分けて、Ⅰ類Aだけの傾向と対策を整理します。
読み終えたときに、次の3つが分かるようにしています。
- Ⅰ類Aでは、どの分野が繰り返し出ているのか
- 現行施策をどこまで調べ、答案でどう使うのか
- 4点前後の資料から、重要な課題をどう選ぶのか
この記事の内容
東京都Ⅰ類Aの論文試験の形式
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出題数 | 1題必答 |
| 解答時間 | 1時間30分(90分) |
| 字数 | 公表問題では1,000字以上1,500字程度 |
| 設問(1) | 資料から重要な課題を選び、200字程度で説明 |
| 設問(2) | 都の現行施策に言及し、行政が進めるべき取組を論述 |
| 資料 | 4点のことが多い |
Ⅰ類A対策で重要なのは、設問(2)の準備です。施策名を暗記するのではなく、現行施策がどの原因へ対応し、何がまだ不足しているかまで整理しておく必要があります。
※ 令和8年度の論文が90分・課題式1題必答であることは、東京都職員採用のⅠ類A公式案内で確認しています。字数・設問文は公表問題に基づくため、受験年度の内容も確認してください。
出題分野の頻度|Ⅰ類Aの11問を数えた結果
| 順位 | 分野 | 件数 | 構成比 |
|---|---|---|---|
| 1 | 観光・文化 | 3 | 27.3% |
| 2 | 高齢・福祉 | 2 | 18.2% |
| 3 | 防災 | 1 | 9.1% |
| 3 | 子育て | 1 | 9.1% |
| 3 | 環境 | 1 | 9.1% |
| 3 | 産業・雇用 | 1 | 9.1% |
| 3 | 教育・人材 | 1 | 9.1% |
| 3 | 多様性・共生 | 1 | 9.1% |
観光・文化が3問、高齢・福祉が2問で、この2分野が全体の45.5%です。観光・文化は平成30年度、令和3年度、令和4年度と複数回出ており、Ⅰ類Aで最初に準備したい分野です。
残る6問は6分野に分かれます。観光・文化、高齢・福祉を軸にしつつ、都の新しい計画で重点化された分野を加える準備が現実的です。
過去問分野と東京都の計画を対応させる
Ⅰ類Aでは、設問(2)で都の現行施策への言及が求められます。最初に「2050東京戦略」で政策全体を見た後、過去問の分野に対応する専門計画で、東京都が認識する課題と政策の方向を確認します。ここでは全分野を同じ粒度で整理します。
| 過去問の分野 | 主な東京都の公式計画 | 公式計画が示す課題 | 公式計画が示す方向 |
|---|---|---|---|
| 高齢・福祉 | 2050東京戦略(戦略07 長寿) 東京都高齢者保健福祉計画 | 高齢者の一人暮らしが増える中、孤立やフレイルを防ぎ、住まい・認知症支援・在宅療養を支えるとともに、介護人材を確保することが課題となっています。 | 高齢者の社会参加と介護予防を促し、生活支援、住まい、医療・介護を地域で切れ目なく提供できる体制を整えることが求められています。 |
| 防災 | TOKYO強靭化プロジェクト | 首都直下地震や風水害が発生した際に、建物倒壊・延焼やライフラインの寸断を抑え、避難生活の長期化や要配慮者の孤立を防ぐことが課題となっています。 | 建物の耐震化・不燃化とライフラインの強靱化を進めるほか、在宅避難の備えや地域の共助、早期復旧の体制をハード・ソフトの両面から強化することが求められています。 |
| 子育て・仕事の両立 | 東京都男女平等参画推進総合計画 | 長時間労働や固定的な性別役割分担が残り、家事・育児・介護の負担が女性に偏ることや、女性の雇用・賃金・管理職登用に格差があることが課題となっています。 | 男性の育業や柔軟な働き方を広げ、経営者・管理職の意識と職場風土を変えることで、性別にかかわらず仕事と家庭を両立できる環境を整えることが求められています。 |
| 環境・資源循環 | ゼロエミッション東京戦略 Beyond カーボンハーフ TOKYOサーキュラーエコノミーアクション | 気候危機が深刻化する中で温室効果ガスを削減すると同時に、大量生産・大量消費・大量廃棄から脱却し、持続可能な資源利用へ転換することが課題となっています。 | 省エネルギーと再生可能エネルギーの利用を拡大し、再生資源の活用や環境配慮設計、都庁の率先行動を通じて、脱炭素と資源循環を一体的に進めることが求められています。 |
| 観光・文化 | PRIME観光都市・東京 東京文化戦略2030 | 観光客の地域・時間帯の偏りや担い手不足に対応し、住民生活と観光の調和を図ることに加え、文化に触れる機会の格差や創作者の活動基盤を改善することが課題となっています。 | 地域資源を磨いて受入環境を整え、持続可能な観光地域経営を進めるとともに、創作・発表の場と、誰もが芸術文化に参加できる機会を広げることが求められています。 |
| 産業・雇用 | Global Innovation Strategy 2.0 東京都中小企業振興ビジョン | スタートアップが成長できる環境を充実させるとともに、中小企業の生産性向上、人材確保、価格転嫁、事業承継、海外展開を後押しすることが課題となっています。 | 企業の成長段階に応じて資金、人材、実証機会、販路をつなぎ、中小企業のDXや経営マネジメント、人材力を総合的に強化することが求められています。 |
| 教育・人材 | 東京都教育ビジョン(第5次) | 子供の置かれた状況や学び方が多様化する中、不登校や特別な支援の必要性、デジタル化・グローバル化への対応、教員の働く環境を改善することが課題となっています。 | 誰一人取り残さない教育を軸に、一人ひとりに応じた学びと協働的な学びを充実させ、学校・家庭・地域・関係機関が連携して教育環境を整えることが求められています。 |
| 多様性・共生 | 東京都多文化共生推進指針 東京都のパラスポーツ施策 | 外国人住民が増える中で、生活に必要な情報や地域参加の機会に差があることに加え、障害のある人が身近な場所でスポーツを続けにくいことが課題となっています。 | 多言語とやさしい日本語で情報を届け、外国人住民の地域参加を促すとともに、パラスポーツの場と支える人材を充実させ、理解と交流を広げることが求められています。 |
この表は、公式計画が示す課題認識と政策の方向を比較するための整理です。個別の施策案や答案例には踏み込まず、受験年度には各リンク先の最新版と進捗資料を確認してください。
4点前後の資料から、課題を1つ選ぶ
資料が多いと、すべての数値を答案へ入れたくなります。しかし設問(1)は200字程度です。資料を要約するのではなく、複数の資料が共通して示す重要な課題を1つに絞る必要があります。
現状は3つの型で読む
| 型 | 資料の読み方 | 次に考えること |
|---|---|---|
| 増減型 | Aが増えている/減っている | 変化を生んだ原因 |
| ギャップ型 | 希望と実態に差がある | 実現を妨げる職場・地域・制度 |
| 格差型 | 地域・世帯・企業規模で差がある | 支援が届かない対象と仕組み |
令和8年度は社会参加の意欲と実際の活動、令和6年度は男女の育休取得率に差が示されました。ギャップ型の資料があれば、原因を本人の意識だけにせず、担い手と仕組みへ広げやすくなります。
原因は「意識・担い手・仕組み」に分ける
- 意識:当事者に知識、時間、余裕がない
- 担い手:事業者や地域団体に人手、ノウハウ、採算がない
- 仕組み:制度、データ、連携、基盤が足りない
過去の出題テーマ一覧|Ⅰ類A
問題文の転載ではなく、各年度の中心テーマを要約しています。
| 年度 | 分野 | テーマ |
|---|---|---|
| 令和8(2026) | 高齢・福祉 | 高齢者が心豊かに暮らし、いつまでも輝ける社会 |
| 令和7(2025) | 防災 | 首都直下地震に備えた在宅避難・避難所の生活継続力 |
| 令和6(2024) | 子育て | 育児と仕事の両立 |
| 令和5(2023) | 環境 | サーキュラーエコノミーの推進 |
| 令和4(2022) | 観光・文化 | 文化振興 |
| 令和3(2021) | 観光・文化 | ウィズコロナ時代の観光振興 |
| 令和2(2020) | 産業・雇用 | イノベーションの創出 |
| 令和元(2019) | 教育・人材 | 未来を担う人材の育成 |
| 平成30(2018) | 観光・文化 | 国際都市・観光都市としての魅力向上 |
| 平成29(2017) | 多様性・共生 | 障害者スポーツの振興 |
| 平成28(2016) | 高齢・福祉 | 福祉先進都市の実現 |
Ⅰ類Aでよくある失点
1. 資料の説明だけで200字を使い切る
数値を並べるだけでは、重要な課題が何か伝わりません。現状を一文で示し、原因または放置した場合の弊害まで書きます。
2. 現行施策を並べて、自分の提案が薄くなる
現行施策は前提です。施策があっても残る原因を示し、その原因に対応する改善策を提案します。
3. 古い施策名をそのまま使う
計画や事業の名称は変わります。受験年度の資料で名称と内容を更新してください。
4. 国の手段を都の取組として書く
法律、全国一律の規制、税制、社会保険制度は基本的に国の手段です。都の権限でできる支援、連携、実証、基盤整備へ置き換えます。
よくある質問
東京都Ⅰ類Aの論文試験は何分ですか。
1時間30分(90分)です。課題式1題必答で、公表問題では1,000字以上1,500字程度で解答します。
現行施策を書く必要がありますか。
設問で都の現行の施策に言及するよう求められます。受験年度の最新施策を、東京都の計画、局別ページ、報道発表資料で確認します。
どの分野が多く出ていますか。
11問では観光・文化が3問、高齢・福祉が2問です。残る6問は6分野に分かれています。
資料はどう読めばいいですか。
資料同士の共通点を探し、増減、ギャップ、格差のどれが示されているかを判断します。その上で重要な課題を1つに絞ります。
まとめ
- Ⅰ類Aは90分・1題必答・資料4点のことが多い
- 設問(2)では、都の現行施策に言及した上で取組を書く
- 過去11問では観光・文化が3問、高齢・福祉が2問
- 都の計画から全体像をつかみ、現行施策の対象と残る課題を整理する
- 資料から課題を1つ選び、原因を意識・担い手・仕組みに分ける
Ⅰ類Aは、知っている施策の数を競う試験ではありません。資料から課題を絞り、現行施策を踏まえて不足を埋める取組を提案できるかが重要です。